中山知行 弁護士

静岡県弁護士会所属 富士市

管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令 民法264条の9~264条の14

管理不全土地・建物管理制度

財産管理制度の相互関係

⑴ 管理不全土地管理命令
 土地に設置された擁壁にひび割れ・破損が生じているが、土地の所有者が放置しており隣地に倒壊するおそれがあるケースや、ゴミが不法投棄された土地を土地の所有者が放置しており、臭気や害虫の発生により健康への被害を生じさせているケース等、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合は、地方裁判所に対し、管理不全土地管理命令を申し立てることができます(民法264条の9第1項)。
⑵ 管理不全建物管理命令
 建物の倒壊、屋根や外壁の脱落・飛散のおそれがあり、他人に財産上・身体上の被害を及ぼすおそれがあるケースなど、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合は、地方裁判所に対し、管理不全建物管理命令を申し立てることができます(民法264条の14第1項)。 

 

・ ごみの除去や雑草の伐採等といった、管理不全土地・建物管理人を選任した目的が達せられたときは、原則として、申立て又は職権により、裁判所は、管理不全土地・建物管理人の選任処分を取り消すことになります。

同土地・建物について、再びごみの除去等をする必要が生じた場合には、管理不全土地・建物管理人選任処分の再度の選任申立てが必要となります(予納金の納付も必要となります。)。その場合は、地方裁判所にご相談ください。

 

区分所有建物については、管理不全建物管理制度が適用されないため(改正区分所有法6条4項)、マンションなどの区分所有建物の専有部分及び共用部分について、管理不全建物管理命令の発令をすることはできません。 

https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/2023/3-1-2_tetudukisetumei_kanrihuzentochitatemono_hanyo.pdf

 

(管理不全土地管理命令)
第二百六十四条の九 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第三項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。
2 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。
3 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。
(管理不全土地管理人の権限)
第二百六十四条の十 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。
2 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
3 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。
(管理不全土地管理人の義務)
第二百六十四条の十一 管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。
2 管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。
(管理不全土地管理人の解任及び辞任)
第二百六十四条の十二 管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。
2 管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
(管理不全土地管理人の報酬等)
第二百六十四条の十三 管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。
2 管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。
(管理不全建物管理命令)
第二百六十四条の十四 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第三項に規定する管理不全建物管理人をいう。第四項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。
2 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。
3 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。
4 第二百六十四条の十から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。

 

弁護士中山知行