中山知行 弁護士

静岡県弁護士会所属 富士市

地方自治法の一部を改正する法律(令和5年法律第19号)は、令和5年5月8日に公布、一部を除き令和6年4月1日から施行される。

地方自治法の一部を改正する法律の公布及び施行について(通知) 総務大臣

https://www.soumu.go.jp/main_content/000879691.pdf

第一 地方議会の役割及び議員の職務等の明確化等に関する事項

一 地方議会の役割及び議員の職務等の明確化

1 普通地方公共団体の議会は、議事機関として、当該普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもって組織されるものと明確化されたこと。(第89条第1項関係)

2 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、並びに検査及び調査その他の権限を行使するものと明確化されたこと。(第89条第2項関係)

3 2の議会の権限の適切な行使に資するため、普通地方公共団体の議会の議員は、住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならないものと明確化されたこと。(第89条第3項関係)

4 本改正は、議会の役割や責任、議員の職務等の重要性が改めて認識されるよう、全ての議会や議員に共通する一般的な事項を規定するものであり、新たな権限や義務を定めるものではないこと。

二 地方議会に係る手続のオンライン化

1 政務活動費の交付を受けた会派又は議員による議長に対する当該政務活動費に係る収入及び支出の状況の報告について、条例で定めるところにより、書面又は電磁的記録をもって行うものとされたこと。(第100条第15項関係)

 本改正により、当該報告を電磁的記録をもって行うことも可能となることから、必要に応じて、条例等の改正を行われたいこと。

2 会議録が電磁的記録をもって作成されている場合の議長による長に対する会議の結果の報告について、当該電磁的記録を添えるものとされたこと。(第123条第4項関係)

3 普通地方公共団体の議会又は議長(4及び7において「議会等」という。)に対して行われる通知のうち第6章(第100条第15項を除く。)の規定において文書その他の人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物(4及び7において「文書等」という。)により行うことが規定されているものについては、当該通知に関する同章の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるものとされたこと。(第138条の2第1項関係)
本項の対象としては、第109条第6項及び第7項、第112条第1項及び第3項並びに第124条が該当すること。

4 議会等が行う通知のうち第6章(第123条第4項を除く。)の規定において文書等により行うことが規定されているものについては、当該通知に関する同章の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるものとされたこと。

ただし、当該通知のうち第99条の規定によるもの以外のものにあっては、当該通知を受ける者が当該電子情報処理組織を使用する方法により受ける旨の表示をする場合に限るものとされたこと。(第138条の2第2項関係)

本項の対象としては、第99条(国会への意見書の提出に限る。)、第118条第1項及び第6項、第127条第1項及び第3項並びに第137条が該当すること。

本項ただし書きは、デジタル化に対応できない者等がいることを前提に、通知を受ける者がオンラインによる通知に同意することを求めるものであるが、第99条のうち国会への意見書の提出については、国会に同意を求める必要がないこととしていること。

5 3又は4の電子情報処理組織を使用する方法により行われた通知については、当該通知に関する第6章の規定に規定する方法により行われたものとみなして、当該通知に関する法令の規定を適用するものとされたこと。(第138条の2第3項関係)

6 3又は4の電子情報処理組織を使用する方法により行われた通知は、当該通知を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該者に到達したものとみなすものとされたこと。(第138条の2第4項関係)

7 本改正は、議会等に対して行われる通知や議会等が行う通知の規定において文書等で行うことが求められていたものについて、各議会の判断により、オンラインにより行うことを可能とするものであることから、従前のとおり、文書等により手続を行うことを妨げるものではないこと。

例えば、請願書の提出をオンラインにより行うことを可能とした場合であっても、文書等によって請願が行われたときは、従前のとおり、これを受理する必要があること。

第二 会計年度任用職員に対する勤勉手当の支給に関する事項地方公務員法第22条の2第1項第1号に掲げるパートタイムの会計年度任用職員に対し、勤勉手当を支給することができるものとされたこと。(第203条の2第4項関係)
なお、地方公務員法第22条の2第1項第2号に掲げるフルタイムの会計年度任用職員については、「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」(平成30年10月18日付総務省自治行政局公務員部長通知「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアルの改訂について」等により通知。以下「マニュアル」という。)において、勤勉手当は支給しないことを基本とすることとしているところであるが、改正法の施行にあわせて今後マニュアルを改訂することを予定していること。

第三 公金事務の私人への委託に関する制度の見直しに関する事項

一 指定公金事務取扱者制度の創設

1 普通地方公共団体の長は、公金の徴収若しくは収納又は支出に関する事務(以下「公金事務」という。)を適切かつ確実に遂行することができる者として政令で定める者のうち当該普通地方公共団体の長が指定するものに、公金事務を委託することができるものとされたこと。(第243条の2第1項関係)

2 普通地方公共団体の長は、1による委託をしたときは、当該委託を受けた者(以下「指定公金事務取扱者」という。)の名称、住所又は事務所の所在地、指定公金事務取扱者に委託した公金事務に係る歳入等又は歳出その他総務省令で定める事項を告示しなければならないものとされたこと。(第243条の2第2項関係)

3 指定公金事務取扱者は、1により委託を受けた公金事務の一部について、公金事務を適切かつ確実に遂行することができる者として政令で定める者に委託をすることができるものとされたこと。この場合において、あらかじめ、当該委託について普通地方公共団体の長の承認を受けなければならないものとされたこと。(第243条の2第5項関係)

4 3により公金事務の一部の委託を受けた者は、当該委託をした指定公金事務取扱者の許諾を得た場合であって、かつ、公金事務を適切かつ確実に遂行することができる者として政令で定める者に対してするときに限り、その一部の再委託をすることができるものとされたこと。この場合において、指定公金事務取扱者は、あらかじめ、当該再委託について普通地方公共団体の長の承認を受けなければならないものとされたこと。(第243条の2第6項関係)

5 会計管理者は、指定公金事務取扱者について、定期及び臨時に公金事務の状況を検査しなければならないものとし、その結果に基づき、指定公金事務取扱者に対して必要な措置を講ずべきことを求めることができるものとされたほか、監査委員は、会計管理者に対し報告を求めることができるものとされたこと。(第243条の2第8項から第10項まで関係)

6 指定公金事務取扱者は、帳簿を備え付け、これに公金事務に関する事項を記載し、及びこれを保存しなければならないものとし、普通地方公共団体の長は、指定公金事務取扱者に対し、報告をさせることができるほか、その職員に、指定公金事務取扱者の事務所に立ち入り、帳簿書類その他必要な物件を検査させ、又は関係者に質問させることができるものとされたこと。(第243条の2の2関係)

7 普通地方公共団体の長は、指定公金事務取扱者が次に掲げるもののいずれかに該当するときは、1による指定を取り消すことができるものとされたこと。(第243条の2の3関係)
ア 1の政令で定める者に該当しなくなったとき。
イ 6に違反して、帳簿を備え付けず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかったとき。
ウ 6による報告をせず、又は虚偽の報告等をしたとき。
エ 6による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は6による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたとき。

8 指定公金事務取扱者に公金事務を委託するに当たっては、3又は4による再委託に係る指定公金事務取扱者に対する長による承認を適切に行い、公金取扱上の責任を明確にするとともに、5による会計管理者の定期及び臨時の検査や監査委員の報告徴収、6による長の立入検査等を適切に行い、公金事務の状況を十分に確認することによって、その適正性を確保する必要があること。

9 5又は6の会計管理者の検査や長の立入検査については、検査の目的や検査対象、検査場所等を踏まえて、効果的かつ適切な方法で行うことが適当であり、デジタル技術を活用することが効果的かつ適切である場合には、例えば、オンライン会議システムを活用することなどにより、遠隔地から行うことも可能であること。

なお、このことは、地方自治法第231条の2の6第3項の規定による指定納付受託者に対する立入検査、同法第235条の2第1項の規定による現金出納の検査、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第168条の4第1項の規定による指定金融機関等に対する検査についても同じであること。

10 指定公金事務取扱者及び当該者から公金事務の一部の委託を受けた者等において、個人情報の保護に係る適切な措置が講じられるよう、指定公金事務取扱者と締結する契約等において、秘密の保持、個人情報の漏えい防止措置、個人情報の目的外利用の制限等、個人情報の保護のために必要な措置について定めることが適当であること。

二 指定公金事務取扱者に対する公金の徴収若しくは収納又は支出に関する事務の委託

1 普通地方公共団体の長が一の1によりその徴収に関する事務を委託することができる歳入は、他の法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、政令で定めるものとされたこと。(第243条の2の4関係)

2 普通地方公共団体の長が一の1によりその収納に関する事務を委託することができる歳入等は、次に掲げるもののいずれにも該当するものとして当該普通地方公共団体の長が定めるものとされたこと。(第243条の2の5関係)

ア 指定公金事務取扱者が収納することにより、その収入の確保及び住民の便益の増進に寄与すると認められるもの

イ その性質上その収納に関する事務を委託することが適当でないものとして総務省令で定めるもの以外のもの
なお、総務省令で定めるものとしては、国から普通地方公共団体に交付される歳入(地方交付税、国庫支出金等)、普通地方公共団体の会計間の歳入(繰入金)等を検討していること。

3 普通地方公共団体の長が一の1によりその支出に関する事務を委託することができる歳出は、他の法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、政令で定めるものとされたこと。(第243条の2の6関係)

4 本改正は、原則として全ての歳入等の収納に関する事務について、長の判断で私人への委託を可能(改正前においては法令で掲げる歳入等のみ可能)とするものであること。

第四 施行期日

改正法は、令和6年4月1日から施行するものとされたこと。ただし、上記第一の一及び下記第五の二に関する規定については公布の日から施行するものとされたこと。(改正法附則第1条関係)

第五 その他(改正法の経過措置に関する事項等)

一 改正前においては地方自治法施行令のほか、児童福祉法(昭和22年法律第164号)等の個別法の規定を根拠として、収納に関する事務の私人への委託が行われてきたところであるが、本改正によりこれらの個別法の規定については廃止され、改正後においては地方自治法第243条の2の5第1項の規定を根拠として委託が行われるものとされたこと。(改正法附則第4条、第6条、第9条、第13条、第18条及び第19条関係)
また、地方公営企業の業務に係る公金の徴収等の事務及び保険料の徴収の事務については、改正後の地方自治法第243条の2第1項の規定により指定する者に委託するものとされたこと。(改正法附則第7条、第8条及び第12条関係)

二 普通地方公共団体の長は、令和6年4月1日前においても、指定公金事務取扱者の指定をすることができるものとされたこと。(改正法附則第2条第2項関係)

三 普通地方公共団体の長は、令和8年3月31日までの間は、なお従前の例により、令和6年4月1日の前日において現に公金の徴収又は収納に関する事務を行わせている者に当該事務を行わせることができるものとされたこと。(改正法附則第2条第3項関係)

四 本改正により請願をオンラインにより行うことが可能となったことに伴い、マイナンバーカードの電子証明書の有効性を確認することができる者として、地方公共団体の議会を追加するものとされたこと。(改正法附則第15条関係)

 

弁護士中山知行