中山知行 弁護士

静岡県弁護士会所属 富士市

Groff v. DeJoy, Postmaster General 2023年6月29日

Groff v. DeJoy

https://www.supremecourt.gov/opinions/22pdf/22-174_k536.pdf

グロフ対デジョイ、郵便局長

背景:

ジェラルド・グロフは、宗教的な理由から日曜日は礼拝と休息の日として過ごすべきだと信じる福音派キリスト教徒である。
2012年、グロフはアメリカ合衆国郵便公社(USPS)で郵便配達の仕事を始めた。当初、日曜日の仕事は一般的ではなかったが、USPSがAmazonの日曜日の配達を開始することに合意した後、状況が変わった。
グロフは日曜日の仕事を避けるために、日曜日の配達を行わない地方のUSPSのステーションに転任した。しかし、そのステーションでもAmazonの配達が始まったため、グロフは日曜日の仕事を拒否し続けた。
結果として、グロフは日曜日に仕事をしなかったことで「段階的な懲戒」を受け、最終的には辞職した。
グロフは、1964年の公民権法第VII条に基づいて訴訟を起こし、USPSが彼の日曜日の安息日の慣行を「事業の運営に過度な困難をもたらすことなく」調整できたと主張した。

判決の要点:

この事件は、約50年ぶりに、Hardisonの輪郭を説明する機会となった。
1972年に第VII条が改正され、雇用主は「宗教の観察や慣行」を「合理的に調整」しなければならないと明記された。
Hardisonの事件では、多くの下級裁判所が「de minimis(ごくわずかな)」という基準を採用してきたが、この基準は誤解を招くものであると考えられる。
今回の判決では、「過度な困難」という言葉の意味を明確にすることを目的としている。

結論:

第VII条の「過度な困難」の基準を明確にした上で、この基準の具体的な適用を下級裁判所に委ねることとした。

 

1964年の公民権法第VII条

背景:
1964年の公民権法は、アメリカ合衆国の公民権運動の中で最も重要な法律の一つとして成立しました。この法律は、人種、宗教、性別、国籍に基づく差別を禁止するもので、第VII条は特に雇用に関連する差別を禁止しています。

主要な内容:

第VII条は、15人以上の従業員を持つ雇用主、労働組合、雇用機関に対して、人種、色、宗教、性別、または国籍に基づく差別を禁止しています。
これには、採用、解雇、昇進、報酬、職務訓練、その他の雇用条件に関する差別が含まれます。
また、雇用者は、宗教的な信念や慣行に基づく合理的な調整を提供する義務があります。ただし、その調整が雇用者の業務に「過度な困難」をもたらす場合は、この義務は免除されます。

実施機関:

第VII条の規定の実施と監督は、平等雇用機会委員会(EEOC)に委ねられています。EEOCは、差別の申し立てを調査し、和解の機会を提供し、場合によっては訴訟を起こす権限を持っています。

影響:

第VII条の成立以降、多くの訴訟が起こされ、多くの重要な判決が下されてきました。これにより、雇用における差別の定義や範囲、雇用者の責任などが明確にされてきました。
また、この条文は、性別や宗教に基づく差別に関する議論や認識を進化させる原動力となってきました。

 

弁護士中山知行