中山知行 弁護士

静岡県弁護士会所属 富士市

BIDEN, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL. v. NEBRASKA ET AL.

Biden v. Nebraska

https://www.supremecourt.gov/opinions/22pdf/22-506_nmip.pdf

判決の要約:

事件名: BIDEN, PRESIDENT OF THE UNITED STATES, ET AL. v. NEBRASKA ET AL.
判決日: 2023年6月30日

背景:

1965年の高等教育法(Education Act)は、連邦の金融援助メカニズムを規定しており、学生ローンも含まれている。
この法律は、教育長官に、特定の限定的な状況でローンをキャンセルまたは削減する権限を与えている。
この事件の主要な問題は、2003年の高等教育救済機会学生法(HEROES Act)の下で、教育法の既存の規定から逸脱し、約4300億ドルの債務元本をキャンセルし、ほぼすべての借り手に影響を与える学生ローン免除プログラムを設立するための権限が教育長官にあるかどうかです。

事件の経緯:

2022年、COVID-19の大流行が終息に向かう中、教育長官はHEROES Actを利用して、ほとんどの借り手の連邦学生債務を削減または免除する「免除と変更」を発行した。
6つの州が、この計画が教育長官の法定権限を超えているとして挑戦した。

判決の内容:

少なくともミズーリ州は、教育長官のプログラムに対して異議を唱える立場にある。
HEROES Actは、教育法の下の金融援助プログラムに適用される既存の法令または規制的な規定を「免除または変更」することを教育長官に許可しているが、学生ローンの元本の4300億ドルをキャンセルする程度の法令を書き換えることは許可していない。

結論:

教育長官の包括的な債務キャンセル計画は、免除としては認められず、変更としても認められない。
この事件は、行政の権限の境界に関するものであり、HEROES Actは、教育長官の計画を正当化するための「明確な議会の承認」を提供していない。
判決は、教育長官の学生ローン免除プログラムがHEROES Actによって認可されていないとの結論を下し、判決を覆し、事件を差し戻しました。

HEROES Act(高等教育救済機会学生法)に関する詳細は以下の通りです。

背景:

HEROES Actは、国家的緊急事態に対応するために制定されました。特に、2001年の9/11テロ事件の後、学生ローンの借り手に対する援助を提供するための先行法が存在していました。この法律は、将来の同様のテロ攻撃に対応するためのものでした。
この法律は、国家的緊急事態が発生した際に、教育長官が迅速に対応できるようにすることを目的としています。緊急事態は、その性質上、迅速な対応が求められるため、この法律はそのような状況に柔軟に対応できるように設計されています。

権限の範囲:

HEROES Actは、教育法の下の金融援助プログラムに適用される既存の法令または規制的な規定を「免除または変更」することを教育長官に許可しています。
この「免除または変更」の権限は、学生ローンの返済や免除に関するさまざまな規定にも及びます。これらの規定は、緊急事態が発生した場合に、借り手がそのローンに関して以前の状況よりも悪い立場にならないようにするためのものです。

以前の使用例:

過去には、HEROES Actの下での「免除」は、特定の法的要件を識別し、それを免除することで、その要件の遵守が不要になるという形で行われていました。例えば、ある時点で、学生が休学のための書面によるリクエストを提供するという要件が免除されました。

主要な問題:

この法律の主要な問題は、教育長官がHEROES Actの下で、約4300億ドルの学生ローンの元本をキャンセルするような大規模な変更を行う権限があるかどうかです。

 

弁護士中山知行