中山知行 弁護士

静岡県弁護士会所属 富士市

マンション管理適正化法の改正概要(令和4年4月1日施行)

マンションは私有財産であることから、これまでは管理組合の自主的な管理に委ねられている状況でしたが、管理の適正化に関する取り組みを計画的に進めていくため、地方公共団体が積極的に関与できる制度が創設されました。
また、これらの制度により、管理組合は自らのマンションの価値の向上や、住人の管理への関心・理解を向上させることができると期待されます。

マンション管理適正化法改正概要

マンション管理の適正化の推進

マンション管理計画認定制度

マンションの管理の適正化の推進を図るための基本的な方針(概要)
概要
前文 マンションは都市部を中心に重要な居住形態となっている一方、その維持管理には多くの課題があることを踏まえ、管理組合がマンションを適正に管理するとともに、行政がマンションの管理状況等を踏まえて、管理適正化の推進のための施策を講じることが必要であることを記載。
一 マンションの管理の適正化の推進に関する基本的な事項
管理組合、国、地方公共団体、マンション管理士、マンション管理業者等の関係者について、それぞれの役割を記載するとともに、相互に連携してマンションの管理適正化の推進に取り組む必要があることを記載。
二 マンションの管理の適正化に関する目標の設定に関する事項
地方公共団体は、国の目標を参考にしつつ、区域内のマンションの状況を把握し、実情に応じた適切な目標を設定することが望ましいことを記載。
三 管理組合によるマンションの管理の適正化の推進に関する基本的な指針(マンション管理適正化指針)に関する事項
マンションの管理の適正化のために管理組合及び区分所有者等が留意すべき事項等を記載するとともに、地方公共団体が助言、指導等を行う場合の判断基準の目安及び管理計画の認定基準をそれぞれ別紙1及び別紙2に記載。
四 マンションがその建設後相当の期間が経過した場合その他の場合において当該マンションの建替えその他の措置に向けたマンションの区分所有者等の合意形成の促進に関する事項
建設後相当の期間が経過したマンションについて、修繕等のほか、要除却認定に係る容積率特例等を活用した建替等を含め、どのような措置をとるべきかを区分所有者と調整して合意形成を図ることが重要であることを記載。
五 マンションの管理の適正化に関する啓発及び知識の普及に関する基本的な事項
国、地方公共団体、マンション管理適正化推進センター、マンション管理士等は、相互に連携し、ネットワークを整備するとともに、管理組合等に対する必要な情報提供及び相談体制の構築等を行う必要があることを記載。
六 マンション管理適正化推進計画の策定に関する基本的な事項
地方公共団体においては、地域の実情を踏まえた上で関係団体等と連携しつつマンション管理適正化推進計画を策定することが望ましいことを記載し、同計画策定にあたって留意すべき事項を記載。
七 その他マンションの管理の適正化の推進に関する重要事項
その他、マンション管理士制度の一層の普及促進や管理計画認定制度の適切な運用等のマンションの管理の適正化の推進に関する重要事項を記載。


https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/content/001465191.pdf

 

改正内容① 地方公共団体による管理適正化推進計画の作成
地方公共団体は、マンション管理適正化の推進を図るための施策等を含む、マンション管理の適正化の推進を図るための計画を作成することができます。
マンション管理適正化推進計画の作成状況等についてはこちらよりご確認ください。

住宅:改正マンション法関連情報 - 国土交通省

改正内容② 管理計画の認定制度
管理適正化推進計画を作成した地域において、マンションの管理計画が一定の基準を満たす場合に、マンション管理組合は地方公共団体から適切な管理計画を持つマンションとして認定を受けることができます。

認定基準については、長期修繕計画の計画期間が一定の年数以上であること、長期修繕計画に基づき修繕積立金を設定していること、集会(総会)を定期的に開催していることなどを基準としています。

改正内容③ 地方公共団体による助言・指導等
地方公共団体は、管理適正化のために必要に応じて助言や指導等を行うことができます。

 

マンションの管理の適正化の推進に関する法律の概要
1.目的
 多数の区分所有者が居住するマンションの重要性が増大していることにかんがみ、マンションの管理の適正化を推進するための措置を講ずることにより、マンションにおける良好な居住環境の確保を図り、もって国民生活の安定向上等に寄与することを目的とする。

 ※マンション:ニ以上の区分所有者が存する建物で人の居住の用に供する専有部分のあるもの並びにその敷地及び付属施設等をいう。

2.管理組合による管理の適正化を確保するための施策
 (1)国土交通大臣によるマンション管理適正化指針の策定
 (2)管理組合、区分所有者による適正な管理に関する努力義務規定
 (3)国・地方公共団体による情報提供等の措置

3.マンション管理士の資格の創設
 (1)マンション管理士
   国土交通大臣の登録を受けて、管理組合の運営その他マンションの管理に関し、相談に応じ、助言・指導等を業として行うもの
 (2)マンション管理士の義務等
   名称使用制限、秘密保持義務、講習受講義務、信用失墜行為の禁止

4.マンション管理業の適正化のための措置
 (1)マンション管理業登録制度の創設
   ・登録の義務付け
   ・管理業務主任者の設置
   ・業務規制(重要事項説明、委託契約書面交付義務、修繕積立金等の分別管理)
   ・情報開示(管理実績、財務諸表等)
 (2)マンション管理業の健全な発展を図るための組織の指定
   ・管理業に関する苦情処理
   ・管理業に従事する者に対する講習
   ・管理費等についての保証

5.マンションの管理の支援のための専門的な組織の指定
 (1)管理に関する相談、苦情処理
 (2)管理組合への情報提供、技術的支援

6.分譲段階における適正化の措置
  竣工図書の管理組合への引渡の徹底等

 

弁護士中山知行

相続土地国庫帰属法 既に施行されています(R5.4.27施行)

条文

https://www.moj.go.jp/content/001398438.pdf

相続土地国庫帰属法

【引き取ることができない土地の要件の概要】

(1) 申請をすることができないケース(却下事由)(法第2条第3項)
 A 建物がある土地
 B 担保権や使用収益権が設定されている土地
 C 他人の利用が予定されている土地
 D 土壌汚染されている土地
 E 境界が明らかでない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地
 

 (2) 承認を受けることができないケース(不承認事由)(法第5条第1項)
 A 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地
 B 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地
 C 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地
 D 隣接する土地の所有者等との争訟によらなければ管理・処分ができない土地
 E その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

 

相続土地国庫帰属制度の審査フローの概要

土地を国に引き渡せるのはどんな人?
相続した土地を国に引き渡すための申請ができるのは、相続や遺贈で土地を取得した相続人のかたです。本制度の開始前(令和5年(2023年)4月27日より前)に相続した土地でも申請できます。
また、兄弟など複数の人たちで相続した共同所有の土地でも申請ができます。ただし、その場合は、所有者(共有者)たち全員で申請する必要があります。
なお、生前贈与を受けた相続人、売買などによって自ら土地を取得した人、法人などは、相続や遺贈で土地を取得した相続人ではないため、申請ができません。

負担金算定の具体例

負担金算定式

https://www.moj.go.jp/content/001380792.xlsx エクセル 負担金自動計算シート

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html#jump1

 

弁護士中山知行

所有不動産記録証明制度(現在は未施行)

所有不動産記録証明制度は2021年(令和3年)の不動産登記法の改正により創設された。2026年(令和8年)4月までに施行されることとなっている。所有不動産記録証明制度では自身や被相続人が登記名義人になっている不動産の一覧を証明書として取得することができるようになる。これにより相続登記の際に、相続人が相続する不動産を調べる手間を軽減させることや相続人が把握していない不動産の相続登記が未了のままになってしまういわゆる相続登記漏れを防ぐことが期待されている。

所有不動産記録証明制度


不動産登記法(改正)

第119条の2(所有不動産記録証明書の交付等)

1 何人も、登記官に対し、手数料を納付して、自らが所有権の登記名義人(これに準ずる者として法務省令で定めるものを含む。)として記録されている不動産に係る登記記録に記録されている事項のうち法務省令で定めるもの(記録がないときは、その旨)を証明した書面(以下この条において「所有不動産記録証明書」という。)の交付を請求することができる。

2 相続人その他の一般承継人は、登記官に対し、手数料を納付して、被承継人に係る所有不動産記録証明書の交付を請求することができる。

3 前2項の交付の請求は、法務大臣の指定する登記所の登記官に対し、法務省令で定めるところにより、することができる。

 

登記官が他の公的機関(住基ネットなど)から取得した死亡情報に基づいて、不動産登記簿上に死亡の事実を符号によって表示する制度も新設されました。(不動産登記法76条の4)

 

弁護士中山知行

所有者不明私道への対応ガイドライン

ガイドライン全文はこちら

これまで変更行為は共有者全員の合意が必要だった。
令和5年4月1日施行後は,
変更行為は、軽微なものは過半数で、軽微以外はいままでどおり全員の同意で。

具体的に、これまでは全員の合意が必要だったものの、改正法施行後は「軽微な変更」として共有者の過半数(言い換えれば一部の賛成が得られない場合でも)

対応できるとガイドラインに記載されているものとして、たとえば、以下の2事例が挙げられる。

・舗装の新設・・・砂利道の共有私道をアスファルト舗装する
・樹木の伐採・・・共有私道の樹木をすべて伐採する

所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)①

改訂ガイドラインの概要

弁護士中山知行

AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について

法務省は8月1日、企業間で交わす契約書を人工知能(AI)で審査するサービスの指針を公表した。法的に争いのない取引契約などを「適法」とした。法律に抵触しない目安を示すのは初めて。法的に曖昧な部分を整理し、企業法務の現場でAIサービスを活用しやすくした。

AI審査は法律に関係する業務をIT(情報技術)で効率化するリーガルテックのひとつで、複数のスタートアップがサービスを提供している。企業の法務担当者などが締結前の契約書をチェックして不利な内容や紛争のリスクを摘み取る作業に利用する。

日経電子版

AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について(概要)

AI等を用いた契約書等関連業務支援サービスの提供と弁護士法第72条との関係について

 

1 弁護士法第 72 条の「報酬を得る目的」にいう「報酬」とは、法律事件に関し、法律事務取扱のための役務に対して支払われる対価をいうとされるところ、「報酬」には、現金に限らず、物品や供応を受けることも含み、額の多少は問わず、第三者から受け取る場合も含むと考えられる。また、「報酬」と認められるためには、当該利益供与と本件サービスの提供との間に対価関係が認められる必要があると考えられる。

2 弁護士法第 72 条の「訴訟事件…その他一般の法律事件」に関し、一般に、「法律事件」とは、法律上の権利義務に関し争いや疑義があり、又は新たな権利義務関係の発生する案件をいうとされるところ、同条の「その他一般の法律事件」に該当するというためには、同条本文に列挙されている「訴訟事件、非訟事件及び…行政庁に対する不服申立事件」に準ずる程度に法律上の権利義務に関し争いがあり、あるいは疑義を有するものであるという、いわゆる「事件性」が必要であると考えられ、この「事件性」については、個別の事案ごとに、契約の目的、契約当事者の関係、契約に至る経緯やその背景事情等諸般の事情を考慮して判断されるべきものと考えられる。

3 弁護士法第72 条の「鑑定…その他の法律事務」にいう「鑑定」とは、法律上の専門的知識に基づき法律的見解を述べることをいうとされ、「その他の法律事務」とは、法律上の効果を発生、変更等する事項の処理をいうとされるところ、これらの点については、本件サービスにおいて提供される具体的な機能や利用者に対する表示内容から判断されるべきものと考えられる。 

4 本件サービスが、上記1から3までの「報酬を得る目的」、「訴訟事件…その他一般の法律事件」及び「鑑定…その他の法律事務」の要件のいずれにも該当する場合であっても、例えば、利用者を以下のいずれかとして本件サービスを提供する場合には、通常、弁護士法第 72 条に違反しないと考えられる。
(1) 本件サービスを弁護士又は弁護士法人に提供する場合であって、当該弁護士又は弁護士法人がその業務として法律事務を行うに当たり、当該弁護士又は当該弁護士法人の社員若しくは使用人である弁護士が、本件サービスを利用した結果も踏まえて審査対象となる契約書等を自ら精査し、必要に応じて自ら修正を行う方法で本件サービスを利用するとき
(2) 本件サービスを弁護士又は弁護士法人以外のものに提供する場合であって、当該提供先が当事者となっている契約について本件サービスを利用するに当たり、当該提供先において職員若しくは使用人となり、又は取締役、理事その他の役員となっている弁護士が上記(1)と同等の方法で本件サービスを利用するとき

詳しくは法務省のサイトを参照してください。

 

弁護士中山知行

 

相続登記の義務化(令和6年4月1日制度開始)

令和6年4月1日から、相続登記の申請が義務化されます。

(1)相続(遺言も含みます。)によって不動産を取得した相続人は、その所有権の取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をしなければなりません。

(2)遺産分割が成立した場合には、これによって不動産を取得した相続人は、遺産分割が成立した日から3年以内に、相続登記をしなければなりません。

(1)と(2)のいずれについても、正当な理由なく義務に違反した場合は10万円以下の過料(行政上のペナルティ)の適用対象となります。

正当な理由の例:相続人が極めて多数に上り、戸籍謄本等の資料収集や他の相続人の把握に多くの時間を要するケースなど。

なお、令和6年4月1日より以前に相続が開始している場合も、3年の猶予期間がありますが、義務化の対象となります。

相続登記が義務化されます

相続登記の申請義務の内容とその履行方法について(詳細)①

https://www.moj.go.jp/content/001396636.pdf

(相続等による所有権の移転の登記の申請)
第七十六条の二 所有権の登記名義人について相続の開始があったときは、当該相続により所有権を取得した者は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、当該所有権を取得したことを知った日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)により所有権を取得した者も、同様とする。
2 前項前段の規定による登記(民法第九百条及び第九百一条の規定により算定した相続分に応じてされたものに限る。次条第四項において同じ。)がされた後に遺産の分割があったときは、当該遺産の分割によって当該相続分を超えて所有権を取得した者は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
3 前二項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、当該各項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
(相続人である旨の申出等)
第七十六条の三 前条第一項の規定により所有権の移転の登記を申請する義務を負う者は、法務省令で定めるところにより、登記官に対し、所有権の登記名義人について相続が開始した旨及び自らが当該所有権の登記名義人の相続人である旨を申し出ることができる。
2 前条第一項に規定する期間内に前項の規定による申出をした者は、同条第一項に規定する所有権の取得(当該申出の前にされた遺産の分割によるものを除く。)に係る所有権の移転の登記を申請する義務を履行したものとみなす。
3 登記官は、第一項の規定による申出があったときは、職権で、その旨並びに当該申出をした者の氏名及び住所その他法務省令で定める事項を所有権の登記に付記することができる。
4 第一項の規定による申出をした者は、その後の遺産の分割によって所有権を取得したとき(前条第一項前段の規定による登記がされた後に当該遺産の分割によって所有権を取得したときを除く。)は、当該遺産の分割の日から三年以内に、所有権の移転の登記を申請しなければならない。
5 前項の規定は、代位者その他の者の申請又は嘱託により、同項の規定による登記がされた場合には、適用しない。
6 第一項の規定による申出の手続及び第三項の規定による登記に関し必要な事項は、法務省令で定める。

過料
第百六十四条 第三十六条、第三十七条第一項若しくは第二項、第四十二条、第四十七条第一項(第四十九条第二項において準用する場合を含む。)、第四十九条第一項、第三項若しくは第四項、第五十一条第一項から第四項まで、第五十七条、第五十八条第六項若しくは第七項、第七十六条の二第一項若しくは第二項又は第七十六条の三第四項の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、十万円以下の過料に処する。


弁護士中山知行

相続人への遺贈登記の単独申請(令和5年4月1日より)

https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/content/001388918.pdf


ある相続人に特定の不動産を「相続させる」旨の遺言については、その相続人の単独申請で所有権移転登記をすることができます。最高裁判例及び不登法63条2項

一方、ある相続人に特定の不動産を「遺贈する」遺言の場合には、これまでは、単独では登記できず、遺言執行者または他の共同相続人全員との共同申請が必要でした。

この点が、「相続させる」遺言と遺贈との大きな違いの一つと言われていました。

今年4月1日施行された不動産登記法では、後者の場合でも、遺贈を受けた相続人による単独申請が可能となりました(不登法63条3項)。

ただし、相続人以外の第三者への遺贈の場合には、依然として単独登記はできません

その他にも、「遺贈」とする場合には注意をしなければならない点がいくつかあります。

なお、令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた相続人(受遺者)についても同様に、令和5年4月1日からは、単独で所有権の移転の登記を申請することができるようになりました。

不動産登記法

第六十三条 第六十条、第六十五条又は第八十九条第一項(同条第二項(第九十五条第二項において準用する場合を含む。)及び第九十五条第二項において準用する場合を含む。)の規定にかかわらず、これらの規定により申請を共同してしなければならない者の一方に登記手続をすべきことを命ずる確定判決による登記は、当該申請を共同してしなければならない者の他方が単独で申請することができる。
2 相続又は法人の合併による権利の移転の登記は、登記権利者が単独で申請することができる。
3 遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第六十条の規定にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。

 

弁護士中山知行

財産管理制度に関するその他の見直し

財産管理制度に関するその他の見直し

民法

(相続財産の保存)
第八百九十七条の二 家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、いつでも、相続財産の管理人の選任その他の相続財産の保存に必要な処分を命ずることができる。ただし、相続人が一人である場合においてその相続人が相続の単純承認をしたとき、相続人が数人ある場合において遺産の全部の分割がされたとき、又は第九百五十二条第一項の規定により相続財産の清算人が選任されているときは、この限りでない。
2 第二十七条から第二十九条までの規定は、前項の規定により家庭裁判所が相続財産の管理人を選任した場合について準用する。

(相続の放棄をした者による管理)
第九百四十条 相続の放棄をした者は、その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人又は第九百五十二条第一項の相続財産の清算人に対して当該財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産を保存しなければならない。
2 第六百四十五条、第六百四十六条並びに第六百五十条第一項及び第二項の規定は、前項の場合について準用する。

(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

 

家事事件手続法

(供託等)
第百四十六条の二 家庭裁判所が選任した管理人は、不在者の財産の管理、処分その他の事由により金銭が生じたときは、不在者のために、当該金銭を不在者の財産の管理に関する処分を命じた裁判所の所在地を管轄する家庭裁判所の管轄区域内の供託所に供託することができる。
2 家庭裁判所が選任した管理人は、前項の規定による供託をしたときは、法務省令で定めるところにより、その旨その他法務省令で定める事項を公告しなければならない。

 

弁護士中山知行

相続人不存在の相続財産の清算手続の見直し

相続人不存在の相続財産の清算手続の見直し

(相続財産の清算人の選任)
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。

(相続債権者及び受遺者に対する弁済)
第九百五十七条 第九百五十二条第二項の公告があったときは、相続財産の清算人は、全ての相続債権者及び受遺者に対し、二箇月以上の期間を定めて、その期間内にその請求の申出をすべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、同項の規定により相続人が権利を主張すべき期間として家庭裁判所が公告した期間内に満了するものでなければならない。
2 第九百二十七条第二項から第四項まで及び第九百二十八条から第九百三十五条まで(第九百三十二条ただし書を除く。)の規定は、前項の場合について準用する。

弁護士中山知行

地方自治法の一部を改正する法律(令和5年法律第19号)は、令和5年5月8日に公布、一部を除き令和6年4月1日から施行される。

地方自治法の一部を改正する法律の公布及び施行について(通知) 総務大臣

https://www.soumu.go.jp/main_content/000879691.pdf

第一 地方議会の役割及び議員の職務等の明確化等に関する事項

一 地方議会の役割及び議員の職務等の明確化

1 普通地方公共団体の議会は、議事機関として、当該普通地方公共団体の住民が選挙した議員をもって組織されるものと明確化されたこと。(第89条第1項関係)

2 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の重要な意思決定に関する事件を議決し、並びに検査及び調査その他の権限を行使するものと明確化されたこと。(第89条第2項関係)

3 2の議会の権限の適切な行使に資するため、普通地方公共団体の議会の議員は、住民の負託を受け、誠実にその職務を行わなければならないものと明確化されたこと。(第89条第3項関係)

4 本改正は、議会の役割や責任、議員の職務等の重要性が改めて認識されるよう、全ての議会や議員に共通する一般的な事項を規定するものであり、新たな権限や義務を定めるものではないこと。

二 地方議会に係る手続のオンライン化

1 政務活動費の交付を受けた会派又は議員による議長に対する当該政務活動費に係る収入及び支出の状況の報告について、条例で定めるところにより、書面又は電磁的記録をもって行うものとされたこと。(第100条第15項関係)

 本改正により、当該報告を電磁的記録をもって行うことも可能となることから、必要に応じて、条例等の改正を行われたいこと。

2 会議録が電磁的記録をもって作成されている場合の議長による長に対する会議の結果の報告について、当該電磁的記録を添えるものとされたこと。(第123条第4項関係)

3 普通地方公共団体の議会又は議長(4及び7において「議会等」という。)に対して行われる通知のうち第6章(第100条第15項を除く。)の規定において文書その他の人の知覚によって認識することができる情報が記載された紙その他の有体物(4及び7において「文書等」という。)により行うことが規定されているものについては、当該通知に関する同章の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるものとされたこと。(第138条の2第1項関係)
本項の対象としては、第109条第6項及び第7項、第112条第1項及び第3項並びに第124条が該当すること。

4 議会等が行う通知のうち第6章(第123条第4項を除く。)の規定において文書等により行うことが規定されているものについては、当該通知に関する同章の規定にかかわらず、電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるものとされたこと。

ただし、当該通知のうち第99条の規定によるもの以外のものにあっては、当該通知を受ける者が当該電子情報処理組織を使用する方法により受ける旨の表示をする場合に限るものとされたこと。(第138条の2第2項関係)

本項の対象としては、第99条(国会への意見書の提出に限る。)、第118条第1項及び第6項、第127条第1項及び第3項並びに第137条が該当すること。

本項ただし書きは、デジタル化に対応できない者等がいることを前提に、通知を受ける者がオンラインによる通知に同意することを求めるものであるが、第99条のうち国会への意見書の提出については、国会に同意を求める必要がないこととしていること。

5 3又は4の電子情報処理組織を使用する方法により行われた通知については、当該通知に関する第6章の規定に規定する方法により行われたものとみなして、当該通知に関する法令の規定を適用するものとされたこと。(第138条の2第3項関係)

6 3又は4の電子情報処理組織を使用する方法により行われた通知は、当該通知を受ける者の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該者に到達したものとみなすものとされたこと。(第138条の2第4項関係)

7 本改正は、議会等に対して行われる通知や議会等が行う通知の規定において文書等で行うことが求められていたものについて、各議会の判断により、オンラインにより行うことを可能とするものであることから、従前のとおり、文書等により手続を行うことを妨げるものではないこと。

例えば、請願書の提出をオンラインにより行うことを可能とした場合であっても、文書等によって請願が行われたときは、従前のとおり、これを受理する必要があること。

第二 会計年度任用職員に対する勤勉手当の支給に関する事項地方公務員法第22条の2第1項第1号に掲げるパートタイムの会計年度任用職員に対し、勤勉手当を支給することができるものとされたこと。(第203条の2第4項関係)
なお、地方公務員法第22条の2第1項第2号に掲げるフルタイムの会計年度任用職員については、「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアル」(平成30年10月18日付総務省自治行政局公務員部長通知「会計年度任用職員制度の導入等に向けた事務処理マニュアルの改訂について」等により通知。以下「マニュアル」という。)において、勤勉手当は支給しないことを基本とすることとしているところであるが、改正法の施行にあわせて今後マニュアルを改訂することを予定していること。

第三 公金事務の私人への委託に関する制度の見直しに関する事項

一 指定公金事務取扱者制度の創設

1 普通地方公共団体の長は、公金の徴収若しくは収納又は支出に関する事務(以下「公金事務」という。)を適切かつ確実に遂行することができる者として政令で定める者のうち当該普通地方公共団体の長が指定するものに、公金事務を委託することができるものとされたこと。(第243条の2第1項関係)

2 普通地方公共団体の長は、1による委託をしたときは、当該委託を受けた者(以下「指定公金事務取扱者」という。)の名称、住所又は事務所の所在地、指定公金事務取扱者に委託した公金事務に係る歳入等又は歳出その他総務省令で定める事項を告示しなければならないものとされたこと。(第243条の2第2項関係)

3 指定公金事務取扱者は、1により委託を受けた公金事務の一部について、公金事務を適切かつ確実に遂行することができる者として政令で定める者に委託をすることができるものとされたこと。この場合において、あらかじめ、当該委託について普通地方公共団体の長の承認を受けなければならないものとされたこと。(第243条の2第5項関係)

4 3により公金事務の一部の委託を受けた者は、当該委託をした指定公金事務取扱者の許諾を得た場合であって、かつ、公金事務を適切かつ確実に遂行することができる者として政令で定める者に対してするときに限り、その一部の再委託をすることができるものとされたこと。この場合において、指定公金事務取扱者は、あらかじめ、当該再委託について普通地方公共団体の長の承認を受けなければならないものとされたこと。(第243条の2第6項関係)

5 会計管理者は、指定公金事務取扱者について、定期及び臨時に公金事務の状況を検査しなければならないものとし、その結果に基づき、指定公金事務取扱者に対して必要な措置を講ずべきことを求めることができるものとされたほか、監査委員は、会計管理者に対し報告を求めることができるものとされたこと。(第243条の2第8項から第10項まで関係)

6 指定公金事務取扱者は、帳簿を備え付け、これに公金事務に関する事項を記載し、及びこれを保存しなければならないものとし、普通地方公共団体の長は、指定公金事務取扱者に対し、報告をさせることができるほか、その職員に、指定公金事務取扱者の事務所に立ち入り、帳簿書類その他必要な物件を検査させ、又は関係者に質問させることができるものとされたこと。(第243条の2の2関係)

7 普通地方公共団体の長は、指定公金事務取扱者が次に掲げるもののいずれかに該当するときは、1による指定を取り消すことができるものとされたこと。(第243条の2の3関係)
ア 1の政令で定める者に該当しなくなったとき。
イ 6に違反して、帳簿を備え付けず、帳簿に記載せず、若しくは帳簿に虚偽の記載をし、又は帳簿を保存しなかったとき。
ウ 6による報告をせず、又は虚偽の報告等をしたとき。
エ 6による立入り若しくは検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又は6による質問に対して陳述をせず、若しくは虚偽の陳述をしたとき。

8 指定公金事務取扱者に公金事務を委託するに当たっては、3又は4による再委託に係る指定公金事務取扱者に対する長による承認を適切に行い、公金取扱上の責任を明確にするとともに、5による会計管理者の定期及び臨時の検査や監査委員の報告徴収、6による長の立入検査等を適切に行い、公金事務の状況を十分に確認することによって、その適正性を確保する必要があること。

9 5又は6の会計管理者の検査や長の立入検査については、検査の目的や検査対象、検査場所等を踏まえて、効果的かつ適切な方法で行うことが適当であり、デジタル技術を活用することが効果的かつ適切である場合には、例えば、オンライン会議システムを活用することなどにより、遠隔地から行うことも可能であること。

なお、このことは、地方自治法第231条の2の6第3項の規定による指定納付受託者に対する立入検査、同法第235条の2第1項の規定による現金出納の検査、地方自治法施行令(昭和22年政令第16号)第168条の4第1項の規定による指定金融機関等に対する検査についても同じであること。

10 指定公金事務取扱者及び当該者から公金事務の一部の委託を受けた者等において、個人情報の保護に係る適切な措置が講じられるよう、指定公金事務取扱者と締結する契約等において、秘密の保持、個人情報の漏えい防止措置、個人情報の目的外利用の制限等、個人情報の保護のために必要な措置について定めることが適当であること。

二 指定公金事務取扱者に対する公金の徴収若しくは収納又は支出に関する事務の委託

1 普通地方公共団体の長が一の1によりその徴収に関する事務を委託することができる歳入は、他の法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、政令で定めるものとされたこと。(第243条の2の4関係)

2 普通地方公共団体の長が一の1によりその収納に関する事務を委託することができる歳入等は、次に掲げるもののいずれにも該当するものとして当該普通地方公共団体の長が定めるものとされたこと。(第243条の2の5関係)

ア 指定公金事務取扱者が収納することにより、その収入の確保及び住民の便益の増進に寄与すると認められるもの

イ その性質上その収納に関する事務を委託することが適当でないものとして総務省令で定めるもの以外のもの
なお、総務省令で定めるものとしては、国から普通地方公共団体に交付される歳入(地方交付税、国庫支出金等)、普通地方公共団体の会計間の歳入(繰入金)等を検討していること。

3 普通地方公共団体の長が一の1によりその支出に関する事務を委託することができる歳出は、他の法律又はこれに基づく政令に特別の定めがあるものを除くほか、政令で定めるものとされたこと。(第243条の2の6関係)

4 本改正は、原則として全ての歳入等の収納に関する事務について、長の判断で私人への委託を可能(改正前においては法令で掲げる歳入等のみ可能)とするものであること。

第四 施行期日

改正法は、令和6年4月1日から施行するものとされたこと。ただし、上記第一の一及び下記第五の二に関する規定については公布の日から施行するものとされたこと。(改正法附則第1条関係)

第五 その他(改正法の経過措置に関する事項等)

一 改正前においては地方自治法施行令のほか、児童福祉法(昭和22年法律第164号)等の個別法の規定を根拠として、収納に関する事務の私人への委託が行われてきたところであるが、本改正によりこれらの個別法の規定については廃止され、改正後においては地方自治法第243条の2の5第1項の規定を根拠として委託が行われるものとされたこと。(改正法附則第4条、第6条、第9条、第13条、第18条及び第19条関係)
また、地方公営企業の業務に係る公金の徴収等の事務及び保険料の徴収の事務については、改正後の地方自治法第243条の2第1項の規定により指定する者に委託するものとされたこと。(改正法附則第7条、第8条及び第12条関係)

二 普通地方公共団体の長は、令和6年4月1日前においても、指定公金事務取扱者の指定をすることができるものとされたこと。(改正法附則第2条第2項関係)

三 普通地方公共団体の長は、令和8年3月31日までの間は、なお従前の例により、令和6年4月1日の前日において現に公金の徴収又は収納に関する事務を行わせている者に当該事務を行わせることができるものとされたこと。(改正法附則第2条第3項関係)

四 本改正により請願をオンラインにより行うことが可能となったことに伴い、マイナンバーカードの電子証明書の有効性を確認することができる者として、地方公共団体の議会を追加するものとされたこと。(改正法附則第15条関係)

 

弁護士中山知行

管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令 民法264条の9~264条の14

管理不全土地・建物管理制度

財産管理制度の相互関係

⑴ 管理不全土地管理命令
 土地に設置された擁壁にひび割れ・破損が生じているが、土地の所有者が放置しており隣地に倒壊するおそれがあるケースや、ゴミが不法投棄された土地を土地の所有者が放置しており、臭気や害虫の発生により健康への被害を生じさせているケース等、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合は、地方裁判所に対し、管理不全土地管理命令を申し立てることができます(民法264条の9第1項)。
⑵ 管理不全建物管理命令
 建物の倒壊、屋根や外壁の脱落・飛散のおそれがあり、他人に財産上・身体上の被害を及ぼすおそれがあるケースなど、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合は、地方裁判所に対し、管理不全建物管理命令を申し立てることができます(民法264条の14第1項)。 

 

・ ごみの除去や雑草の伐採等といった、管理不全土地・建物管理人を選任した目的が達せられたときは、原則として、申立て又は職権により、裁判所は、管理不全土地・建物管理人の選任処分を取り消すことになります。

同土地・建物について、再びごみの除去等をする必要が生じた場合には、管理不全土地・建物管理人選任処分の再度の選任申立てが必要となります(予納金の納付も必要となります。)。その場合は、地方裁判所にご相談ください。

 

区分所有建物については、管理不全建物管理制度が適用されないため(改正区分所有法6条4項)、マンションなどの区分所有建物の専有部分及び共用部分について、管理不全建物管理命令の発令をすることはできません。 

https://www.courts.go.jp/tokyo/vc-files/tokyo/2023/3-1-2_tetudukisetumei_kanrihuzentochitatemono_hanyo.pdf

 

(管理不全土地管理命令)
第二百六十四条の九 裁判所は、所有者による土地の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該土地を対象として、管理不全土地管理人(第三項に規定する管理不全土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「管理不全土地管理命令」という。)をすることができる。
2 管理不全土地管理命令の効力は、当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地にある動産(当該管理不全土地管理命令の対象とされた土地の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。
3 裁判所は、管理不全土地管理命令をする場合には、当該管理不全土地管理命令において、管理不全土地管理人を選任しなければならない。
(管理不全土地管理人の権限)
第二百六十四条の十 管理不全土地管理人は、管理不全土地管理命令の対象とされた土地及び管理不全土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により管理不全土地管理人が得た財産(以下「管理不全土地等」という。)の管理及び処分をする権限を有する。
2 管理不全土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意でかつ過失がない第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 管理不全土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
3 管理不全土地管理命令の対象とされた土地の処分についての前項の許可をするには、その所有者の同意がなければならない。
(管理不全土地管理人の義務)
第二百六十四条の十一 管理不全土地管理人は、管理不全土地等の所有者のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。
2 管理不全土地等が数人の共有に属する場合には、管理不全土地管理人は、その共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。
(管理不全土地管理人の解任及び辞任)
第二百六十四条の十二 管理不全土地管理人がその任務に違反して管理不全土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、管理不全土地管理人を解任することができる。
2 管理不全土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
(管理不全土地管理人の報酬等)
第二百六十四条の十三 管理不全土地管理人は、管理不全土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。
2 管理不全土地管理人による管理不全土地等の管理に必要な費用及び報酬は、管理不全土地等の所有者の負担とする。
(管理不全建物管理命令)
第二百六十四条の十四 裁判所は、所有者による建物の管理が不適当であることによって他人の権利又は法律上保護される利益が侵害され、又は侵害されるおそれがある場合において、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、当該建物を対象として、管理不全建物管理人(第三項に規定する管理不全建物管理人をいう。第四項において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「管理不全建物管理命令」という。)をすることができる。
2 管理不全建物管理命令は、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物にある動産(当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該管理不全建物管理命令の対象とされた建物の所有者又はその共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。
3 裁判所は、管理不全建物管理命令をする場合には、当該管理不全建物管理命令において、管理不全建物管理人を選任しなければならない。
4 第二百六十四条の十から前条までの規定は、管理不全建物管理命令及び管理不全建物管理人について準用する。

 

弁護士中山知行

民法264条の2から264条の8 所有者不明土地管理人制度 所有者不明建物管理人制度 令和5年4月1日施行

法務省のサイト 所有者不明土地管理人制度

https://www.moj.go.jp/content/001369525.pdf

 

所有者の所在が不明な土地等の管理・処分を行なうための制度として、裁判所が、不在者財産管理人や相続財産管理人を選任して管理・処分する仕組みがある。しかしこれらは、対象者の財産全般を管理する仕組みであって、特定の土地等を管理する場合には利用できない。所有者不明土地管理命令(所有者不明建物管理命令)は、その必要に応えるべく創設された制度である。

所有者不明土地管理人が選任されたら,その土地等の処分権限・管理権限は所有者不明土地管理人に専属するので,不在者財産管理人や相続財産管理人や清算人は,処分・管理権限がなくなり,処分しても無効である。

所有者不明土地等の管理権限は、所有者不明土地管理人に専属する。この場合、保存行為や土地等の性質を変えない利用・改良行為は自身の判断で行なえるが、これらの範囲を超える行為(売却などの処分)をするには、裁判所の許可が必要である。


(所有者不明土地管理命令)

第二百六十四条の二 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地(土地が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない土地の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る土地又は共有持分を対象として、所有者不明土地管理人(第四項に規定する所有者不明土地管理人をいう。以下同じ。)による管理を命ずる処分(以下「所有者不明土地管理命令」という。)をすることができる。
2 所有者不明土地管理命令の効力は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地(共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である土地)にある動産(当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)に及ぶ。
3 所有者不明土地管理命令は、所有者不明土地管理命令が発せられた後に当該所有者不明土地管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び当該所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産の管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。
4 裁判所は、所有者不明土地管理命令をする場合には、当該所有者不明土地管理命令において、所有者不明土地管理人を選任しなければならない。
(所有者不明土地管理人の権限)
第二百六十四条の三 前条第四項の規定により所有者不明土地管理人が選任された場合には、所有者不明土地管理命令の対象とされた土地又は共有持分及び所有者不明土地管理命令の効力が及ぶ動産並びにその管理、処分その他の事由により所有者不明土地管理人が得た財産(以下「所有者不明土地等」という。)の管理及び処分をする権利は、所有者不明土地管理人に専属する。
2 所有者不明土地管理人が次に掲げる行為の範囲を超える行為をするには、裁判所の許可を得なければならない。ただし、この許可がないことをもって善意の第三者に対抗することはできない。
一 保存行為
二 所有者不明土地等の性質を変えない範囲内において、その利用又は改良を目的とする行為
(所有者不明土地等に関する訴えの取扱い)
第二百六十四条の四 所有者不明土地管理命令が発せられた場合には、所有者不明土地等に関する訴えについては、所有者不明土地管理人を原告又は被告とする。
(所有者不明土地管理人の義務)
第二百六十四条の五 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)のために、善良な管理者の注意をもって、その権限を行使しなければならない。
2 数人の者の共有持分を対象として所有者不明土地管理命令が発せられたときは、所有者不明土地管理人は、当該所有者不明土地管理命令の対象とされた共有持分を有する者全員のために、誠実かつ公平にその権限を行使しなければならない。
(所有者不明土地管理人の解任及び辞任)
第二百六十四条の六 所有者不明土地管理人がその任務に違反して所有者不明土地等に著しい損害を与えたことその他重要な事由があるときは、裁判所は、利害関係人の請求により、所有者不明土地管理人を解任することができる。
2 所有者不明土地管理人は、正当な事由があるときは、裁判所の許可を得て、辞任することができる。
(所有者不明土地管理人の報酬等)
第二百六十四条の七 所有者不明土地管理人は、所有者不明土地等から裁判所が定める額の費用の前払及び報酬を受けることができる。
2 所有者不明土地管理人による所有者不明土地等の管理に必要な費用及び報酬は、所有者不明土地等の所有者(その共有持分を有する者を含む。)の負担とする。

(所有者不明建物管理命令)
第二百六十四条の八 裁判所は、所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物(建物が数人の共有に属する場合にあっては、共有者を知ることができず、又はその所在を知ることができない建物の共有持分)について、必要があると認めるときは、利害関係人の請求により、その請求に係る建物又は共有持分を対象として、所有者不明建物管理人(第四項に規定する所有者不明建物管理人をいう。以下この条において同じ。)による管理を命ずる処分(以下この条において「所有者不明建物管理命令」という。)をすることができる。
2 所有者不明建物管理命令の効力は、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物(共有持分を対象として所有者不明建物管理命令が発せられた場合にあっては、共有物である建物)にある動産(当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が所有するものに限る。)及び当該建物を所有し、又は当該建物の共有持分を有するための建物の敷地に関する権利(賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利(所有権を除く。)であって、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物の所有者又は共有持分を有する者が有するものに限る。)に及ぶ。
3 所有者不明建物管理命令は、所有者不明建物管理命令が発せられた後に当該所有者不明建物管理命令が取り消された場合において、当該所有者不明建物管理命令の対象とされた建物又は共有持分並びに当該所有者不明建物管理命令の効力が及ぶ動産及び建物の敷地に関する権利の管理、処分その他の事由により所有者不明建物管理人が得た財産について、必要があると認めるときも、することができる。
4 裁判所は、所有者不明建物管理命令をする場合には、当該所有者不明建物管理命令において、所有者不明建物管理人を選任しなければならない。
5 第二百六十四条の三から前条までの規定は、所有者不明建物管理命令及び所有者不明建物管理人について準用する。

地方公共団体の長等には所有者不明土地管理命令・所有者不明建物管理命令の申立権の特例があります(令和4年改正所有者不明土地特措法42条2項・5項)

所有者不明土地の管理に関する民法の特例
第四十二条 国の行政機関の長又は地方公共団体の長(次項及び第五項並びに次条第二項及び第五項において「国の行政機関の長等」という。)は、所有者不明土地につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、家庭裁判所に対し、民法(明治二十九年法律第八十九号)第二十五条第一項の規定による命令又は同法第九百五十二条第一項の規定による相続財産の清算人の選任の請求をすることができる。
2 国の行政機関の長等は、所有者不明土地につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、地方裁判所に対し、民法第二百六十四条の二第一項の規定による命令の請求をすることができる。
3 市町村長は、管理不全所有者不明土地につき、次に掲げる事態の発生を防止するため特に必要があると認めるときは、地方裁判所に対し、民法第二百六十四条の九第一項の規定による命令の請求をすることができる。
一 当該管理不全所有者不明土地における土砂の流出又は崩壊その他の事象によりその周辺の土地において災害を発生させること。
二 当該管理不全所有者不明土地の周辺の地域において環境を著しく悪化させること。
4 市町村長は、管理不全隣接土地につき、次に掲げる事態の発生を防止するため特に必要があると認めるときは、地方裁判所に対し、民法第二百六十四条の九第一項の規定による命令の請求をすることができる。
一 当該管理不全隣接土地及び当該管理不全隣接土地に係る管理不全所有者不明土地における土砂の流出又は崩壊その他の事象によりその周辺の土地において災害を発生させること。
二 当該管理不全隣接土地及び当該管理不全隣接土地に係る管理不全所有者不明土地の周辺の地域において環境を著しく悪化させること。
5 国の行政機関の長等は、第二項(市町村長にあっては、前三項)の規定による請求をする場合において、当該請求に係る土地にある建物につき、その適切な管理のため特に必要があると認めるときは、地方裁判所に対し、当該請求と併せて民法第二百六十四条の八第一項又は第二百六十四条の十四第一項の規定による命令の請求をすることができる。

当該不動産の登記簿には管理人が選任された旨が嘱託登記(官公署が登記所に申請して行う登記)によって公示される。

弁護士中山知行